雨の神代春バラ③

最後はあっさり……と思っていたのですが、結構な写真の枚数になっている気が?💦

実は、神代植物公園で催された「世界中の銘花から最新のコンクール品種まで」というバラのセミナーを受講してきたので、その成果(?)も織り込みつつご紹介します。

1962年フランス・ゴジャール社作出のカナスタ(↓)。丸弁高芯咲きの鮮やかな一輪。スペイン語で「籠」を意味するこの名前は、アメリカで大流行したカードゲームにちなんでいるようです。

1981年アメリカ・ウィリアム・ワリナー氏作出のイントゥリーグ(↓)。「陰謀・策謀」という意味ですが、同時に「人の興味を引き付ける、好奇心をそそる」という意味もある単語。悪女のイメージでしょうか。1963年ドイツ・コルデス社作出のウィンナー・シャルメ(↓)。登録名称がWiener Charmeなので、正しく発音するとヴィーナー・シャルメなのでしょうが、前半がドイツ語、後半がフランス語ですな。「ウィーンの魅惑」といった意味になります。2004年フランス・メイアン社作出のチャイコフスキー(↓)。この写真では丸みのあるかわいらしい咲き方をしていますが、花弁ギッシリのロゼット咲きをすることもある、多様な花の形を持つ品種です。1964年イギリス・ディクソン社作出のシー・パール(↓)。神代植物公園では「フラワー・ガール」の名称を採用していますが、この名前だと違う品種のほうが検索に引っかかるんですよね。ということで、キャプションは「フラワー・ガール」だけど、シー・パールとしてご紹介します。1974年フランス・メイアン社作出のシャルル・ドゥ・ゴール(↓)。青バラを意識した藤色の大輪・芳香種。この花や、下にご紹介する2012年ドイツ・タンタウ社作出のレイニー・ブルー(↓)のような藤色のバラは、日本では大人気で、数多く輸入されたり作出されたりしています。が、この人気、日本限定だそうです。こういうニュアンスカラーは、はっきりした色を好む他国ではさっぱり売れないそうで……( ;∀;)1987年ドイツ・ハンス・エヴァース氏作出のロココ(↓)。薄いアプリコット色の花びらが柔らかなウェーブを描く品種ですが、ロココが貝殻の曲線を語源に持つことを考えると、確かにロココ。

2005年ドイツ・コルデス社作出のポンポネッラ(↓)。コロコロとした小さな丸い花がいっせいに開く品種で、「ポンポンのような」という意味の名前だそうです。ポンポンという語感は万国共通なのか?

1993 年日本・京成バラ園芸作出の熱情(↓)。剣弁高芯咲きの「ザ・薔薇」という姿です。昔はこのタイプのバラこそが至高とされ、栽培する人間がマメに消毒したり、肥料を加えて手をかけて育てるのが当たり前とされていました。最近はバラの栽培をする人が増え、次第に「手がかからないこと」を重視するようになったとのこと。2011年フランス・メイアン社作出のつるスマイリー・フェイス(↓)。黄色いバラは黒星病にかかりやすいそうですが、この品種は「黒星病に強い」がセールスポイントになっています。2000年フランス・メイアン社作出のノック・アウト(↓)。セミナーの講師さんによると、虫にも病気にも強いこの品種が登場した時、「育てるのは楽かもしれないけど、花に面白みがない」と言われたのですが、なんと2018年にバラの殿堂入り! いきなり評価も変わって、以後、「手がかからないバラ」全盛となったそうです。1989年ドイツ・ノアック・ローゼン社作出のフラワー・カーペット・ピンク(↓)。ノック・アウトに続いて殿堂入りとなったこのバラも、耐病性に優れ、薬剤散布をほとんど必要としないのが売り。神代植物公園にも今年から仲間入りしました。こういうトレンドは理解できるのですが、鑑賞オンリー、見る専の私はやっぱり存在感のあるゴージャスなバラが好きだなあ……。

つづきいきます。

1974年日本・加藤氏作出のつるミニュエット(↓)。1969年アメリカ・ウォルター・ラマーツ氏作出のミニュエットの枝変わりです。メヌエットという読みでも登録されているようです。ロゼット咲きかな?1982年ドイツ・コルデス社作出のロザンナ(↓)。美しいローズピンクの剣弁高芯咲き品種。ロザンナはイタリアの女性の名前で、バラ(ローザ)にちなんでいます。1971年アメリカ・ジーン・バーナー氏作出のつるスーパー・スター(↓)。1960年ドイツ・タンタウ社作出のスーパー・スターの枝変わりです。キャプションはスーパー・スターですが、こちらはつる。園内にスーパー・スターもあります。どちらも鮮やかな朱色の大輪を咲かせます。1933年アメリカ・バーン・ヒロック氏作出のつるミセス・ピエル・S・デュポン(↓)。1929年フランス・シャルル・マレラン氏作出のミセス・ピエル・S・デュポンの枝変わり。古い品種ですが、当時こんなに濃い色の黄バラは画期的だったそうです。1998年日本・市橋久直氏作出のつるブルー・バユー(↓)1993年ドイツ・コルデス社作出のブルー・バユーの枝変わり。ブルー・バユーの優雅な美しさはつるになっても失われていませんね。1982年ドイツ・コルデス社作出のウルメール・ミュンスター(↓)。ビロードのような質感のロマンティックな紅バラで、雨の雫が似合いますね。ウルムにある大聖堂の名前が付けられています。1970年日本・京成バラ園芸作出の羽衣(はごろも)(↓)。つる性なので、フェンスをピンク色の花が彩る様子を羽衣に例えたようです。1964年ドイツ・コルデス社作出のシンパシー(↓)。赤つるバラの代表的な品種だそうです。日本原産のテリハノイバラの性質を引き継いでいるため、丈夫!1985年イギリス・ディクソン社作出のエリナ(↓)。2006年にバラの殿堂入りした名花です。神代植物公園の殿堂入りバラを集めたコーナーに植えられているのですが、咲くタイミングがちょっと遅めなので、何度か通ってこの美しい開花を見届けるのが楽しみです。1981年フランス・メイアン社作出のローラ’81(↓)。元在仏コロンビア大使夫人の名前とのことです。神代植物公園ではスーパー・スターと並んで植えられているので、辺り一面朱色です。1978年ドイツ・コルデス社作出のラバグルト(↓)。フロリバンダ(四季咲き中輪系の房咲き)の中でも特に見事な房咲きとなります。切るとそのままブーケにできそう。ドイツ語で「赤熱した溶岩」という意味だそうです。1990年日本・鈴木省三氏作出の銀嶺(↓)。この写真ではわかりませんが、花びらの先がうっすらとピンク色に色づくようです。中輪なのに素晴らしい存在感の白バラ。1981年ドイツ・コルデス社作出のハーモニー(↓)。フルーツ香の芳香種で、鮮やかな朱色の大輪を咲かせます。1995年アメリカ・キース・ザリー氏作出のミラベラ(↓)。フランスの黄色いスモモ、ミラベルにちなんで名付けられたと思われます。2014年ドイツ・コルデス社作出のディープ・ボルドー(↓)。神代植物公園では新顔ですね。ボルドーワインを思わせる深い赤という意味の名前だと思います。1963年アメリカ・ユージーン・バーナー氏作出のサラトガ(↓)。アメリカの独立戦争の舞台となった地名が付けられています。淡いピンクからアイボリー、白へと色が変化していく美しい白バラ。 1968年フランス・メイアン社作出のインターフローラ(↓)。イギリス・リンカーンシャーに本部を置く世界最大のフローリスト企業の名前ですが、そこから取ったのかどうかは不明です。1965年アメリカ・ユージーン・バーナー氏作出のジョン・F・ケネディ(↓)。アメリカ人にとっては、かの大統領はこういうイメージなのでしょう。

神代植物公園には、公園整備の基となったロサンゼルスから贈られたバラが植えられている花壇があります。開園は1961年ですから、60年以上たっているんですね。園芸種のバラはきれいな花が咲くまでに3年くらいかかり、手をかけて育てても10年くらいで花付きが悪くなる、つまりその辺りが寿命と考えられているそうです。なので、専門家は神代植物公園に来ると、もうほかでは見られなくなった品種がしっかりと育てられ、まだ美しい花を咲かせていることに驚嘆するのだとか。こういった古い株を守るのも、植物園の使命なのだそうです。

 

最後に、もう一つ神代植物公園が担っている新品種発掘の舞台「国際バラコンクール花壇」(↓)に咲く、まだ名前のない花たちをご紹介して閉幕といたします。

このバラたちのデビューが楽しみです!

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