京成バラ園の春バラ(遅刻)レポ4(最終回)
はい、ようやく最終回です。
今回はバラの名前の由来や育種家をムキになって調べているので、次回の京成バラ園のレポはいったい何を書けばいいのか、今から心配です。
2010年ドイツ・タンタウ社作出のキャメロット(↓)。ピンク色の花びらに濃桃色の絞りが入った個性的な花です。キャメロットはアーサー王伝説に登場する城の名前で、ここに円卓があったと言われています。昔、ウィンチェスターにある円卓を見に行ったなあ。2001年イギリス・デビッド・オースティン社作出のウィリアム・シェイクスピア2000(↓)。1987年に作出されたウィリアム・シェイクスピアが病害に弱かったため、新たに別の系統のバラから生み出された品種だそうです。重厚でドラマチックな、史劇や悲劇を想定したデザインですね。
2000年イギリス・デビッド・オースティン社作出のフォールスタッフ(↓)。シェイクスピアの『ヘンリー4世』に登場する、ハル王子の悪友の名ですね。ちょっと花の形が崩れかけていますが、どうしてもご紹介したくて。『ヘンリー4世』では即位したハル王子に冷たくあしらわれて退場しますが、愛嬌のあるキャラとして人気が高く、後に『ウィンザーの陽気な女房たち』の主役として返り咲きます。
2007年イギリス・デビッド・オースティン社作出のティー・クリッパー(↓)。中国からイギリスにお茶を少しでも多く、速く運ぶために生まれた快速帆船をティー・クリッパーと呼びます。イギリスのグリニッジに保存されているカティサーク号がその代表で、高いマストと大小さまざまな帆が特徴。帆船マニアなのでもちろん見に行きました!
2013年イギリス・デビッド・オースティン社作出のトランクイリティ(↓)。「落ち着き、静謐」という意味です。今回初めて気づきましたが、米語だとtranquility、英語だとtranquillityというスペルになるんですね(エルが1つ多い)。開いたつぼみは少し黄色がかっていて、花が開くにつれて純白に変化します。夢のように美しい白バラです。
1995年イギリス・デビッド・オースティン社作出のパット・オースティン(↓)。デビッド・オースティン社の創業者、デビッド・オースティン・シニアが妻の名を付けたバラです。やさしいオレンジ色のカップ咲き。1997年イギリス・デビッド・オースティン社作出のソフィーズ・ローズ(↓)。イギリスのディスレクシア研究所創設者の娘さんの名前にちなんで命名されました。ディスレクシア(失読症)は、トム・クルーズがカミングアウトして有名になった学習障害の一つです。
1990年イギリス・デビッド・オースティン社作出のジェーン・オースティン(↓)。デビッド・オースティン・シニアの息子、ジェイムズ・オースティンの奥様の名前にちなんで命名されました。京成バラ園さん、名札の英語表記がThe Ingenious Mr. Fairchildと、別のバラの名前と作出年になっていたので、直してくださいね~💦
1988年イギリス・デビッド・オースティン社作出のエル・ディー・ブレイスウェイト(↓)。同社のイングリッシュローズの中でもっとも明るいクリムゾン色だそうです。名前は、デビッド・オースティン・シニア氏の義父にあたる、レオナルド・ダッドリー・ブレスウェイト氏の名にちなんでいます。
1990年イギリス・デビッド・オースティン社作出のブラザー・カドフィール(↓)。イギリスの女性作家、エリス・ピーターズの中世を舞台にした探偵小説「修道士カドフェル」シリーズの主役の名前です。原作もBBCのドラマも大好きで、舞台となっているシュルーズベリーまで聖地巡りに行ってきました! シュルーズベリーは、デビッド・オースティン社のあるシュロップシャー州の都市です。
1987年オランダ・フェアシューレン社作出のゴールデン・ボーダー(↓)。同社は1875年創業の長い歴史を持つ育種会社で、家族経営で今日まで事業を続けています。オランダ語の読み方がこれでいいか、ちょっと自信がないですが。
1990年ドイツ・コルデス社作出のマイナウフォイヤー(↓)。ドイツのボーデン湖にあるマイナウ島は、四季の花々が楽しめることで有名だそうです。そこに咲く赤いバラということでフォイヤー(炎)と名付けられています。京成バラ園さんの名札は「マイナーフェアー」。う~ん、ボランティアさせて!
1985年フランス・メイアン社作出のホワイト・メイディランド(↓)。レポ1のマジック・メイディランドと同じメイディランド・シリーズです。庭の低い部分を覆う修景バラですが、一輪一輪も見ごたえがあるお得な品種。
1991年フランス・メイアン社作出のザ・マッカートニー・ローズ(↓)。ビートルズのポール・マッカートニーの名を冠したバラで、濃厚なダマスク香が特徴の芳香種です。
2003年フランス・メイアン社作出のピンク・スワニー(↓)。満開になると、もっと華やかなロゼット咲きになります。1978年同社作出のスワニーのピンクバージョンと思われます。
2008年フランス・メイアン社作出のリモンチェッロ(↓)。イタリアのレモンを漬け込んだ食後酒、リモンチェッロの名を付けていますが、確かに色合いはそのまんま! 病気に強く無農薬でも育てられるということで、庭でバラを育てているMさんがいつも買うか買わないか悩んでいます。
2002年ドイツ・タンタウ社作出のアルブレヒト・デューラー・ローズ(↓)。コーラルピンクの複雑な色合いのバラです。名前はもちろん、ルネサンス期の画家、アルブレヒト・デューラーから。私の大好きなドイツ・ニュールンベルクの出身で、自画像がイケメンロックスターみたいなのがいいんです!
1991年ドイツ・コルデス社作出のサマーモルゲン(↓)。名札を見た瞬間、「? 半端な名前だな?」とスペルをチェックしたら、Sommermorgen(ゾマーモルゲン)でした。ボ、ボランティア~💦 「夏の朝」という意味ですね。
2006年フランス・メイアン社作出のバニラ・ボニカ(↓)。同社のボニカ’82は2003年にバラの殿堂入りした名花ですが、交配の系統は異なるようです。淡いクリーム色が純白の花びらにアクセントを付けています。
1970年ドイツ・タンタウ社作出のランドラ(↓)。当時の代表的な黄バラ品種で、サンブレストという別名も持っています。ランドラの語源は探れなかったのですが、サンブレストのほうは「太陽の恵み」という意味になるそうです。納得。
1967年北アイルランド・ディクソン社作出のレッド・デビル(↓)。レッド・ライオン(1964年北アイルランド・サミュエル・マグレディ4世氏作出)、レッド・クイーン(1998年ドイツ・コルデス社作出)と共に「スリーレッド」と呼ばれる、切り花用品種の名花です。
1994年ドイツ・コルデス社作出のグレーフィン・ソニア(↓)。「ソニア伯爵夫人」という意味ですが、これが誰を指すのかは、調べきれませんでした。花びらの表側が薄いピンクで、覆輪(花弁の縁が色違いになること)と裏側が濃いピンクという凝った構造の花です。
1992年ドイツ・タンタウ社作出のインカ(↓)。黄金を豊富に蓄えていたインカ文明のイメージから名付けられたのでしょうか。花びらの数は少なめですが、花の形がとても優雅です。
1981年ドイツ・コルデス社作出のブルグント’81(↓)。やっとすごくドイツっぽい名前の花が! ゲルマン人が築いたブルグント王国は、フン族との戦いで国王グンテルを失います。この辺りを題材にしているのがかの有名な「ニーベルンゲンの歌」。ヒロインのクリームヒルトはグンテルの妹でブルグント王国の王女です。かなり血生臭いストーリーなので、やっぱり赤バラですよね。
1983年ドイツ・コルデス社作出のニュー・アベ・マリア(↓)。「アベ・マリア」とは、受胎告知の際に大天使ガブリエルが呼びかけた「こんにちは、マリア」という挨拶の言葉なのだそうです。聖母マリアは青いマントと赤い服で描かれることが多いですが、赤には「神の慈愛」という意味があるのだとか。
2001年イギリス・ディクソン社作出のシンプリー・ヘブン(↓)。天国を思わせる花なんですね。すごいネーミングだな。ですが確かに、うっとりするような美しい色と形です。
1996年アメリカ・J&P社キース・ザリー氏作出のタイムレス’98(↓)。「不朽の、永遠の」という意味で、花付きがよく、次から次へと開花するこの品種にふさわしい名前です。
1988年日本・京成バラ園芸作出の万葉(↓)。作出者に鈴木省三さんと平林浩さんの名前が記されています。フリルのような花びらが特徴で、万葉時代のイメージだそうです。1983年ドイツ・コルデス社作出のコンラッド・ヘンケル(↓)。ドイツの多国籍化学品・消費財企業ヘンケル社の創業者の孫で、長年ヘンケルグループのトップを務めた人物の名前にちなんでいます。まるで絵画のような完成度の高いフォルムですね。
1981年ドイツ・タンタウ社作出のドフトゴールド(↓)。スペルからすると正しくはドゥフトゴルトかな? 「香る黄金」のような意味で、フレグラント・ゴールドという別名もあります。黄バラには珍しい芳香種だそうです。
1995年アメリカ・J・クリステンセン作出のブラス・バンド(↓)。春の一番花は赤みがかったオレンジ色、 二番花以降はアプリコットオレンジの発色を見せます。
2016年日本・京成バラ園芸作出の花山吹(はなやまぶき)(↓)。武内俊介さん作出です。いくつかのHPに「源氏物語で紫の上を見初めた際の光源氏の衣の色合わせにちなんでいる」とあったので原典を読んでみたのですが、あのシーンの源氏の服装の描写がない?(紫の上は白い袿の上に、山吹色の表着を重ねている)ので、真相は不明。かさねの「花山吹」が、黄色に浅紅を重ねた色目なので、こちらと考えてもいいですね。
2020年オランダ・インタープラント社作出のパール・イヤリング(↓)。芳香種で、「シトラスを含むティー系の甘い香り」と解説されていました。ちなみに、バラの香りの分類はダマスク・クラシック、ダマスク・モダン、スパイシー、ティー、フルーティ、ブルー、ミルラの8種類とされることが多いようです。
1991年フランス・メイアン社作出のフレグラント・レディ(↓)。フルーティ香の芳香種です。これぞバラ色! オーストラリアではメアリー・ポッター財団のホスピスケアのシンボルローズとして、メアリー・ポッターの名で知られているそうです。
2008年アメリカ・J&P社作出のレモン&ジンジャー(↓)。ネーミング的にすごく香りそうですが、微香種です。やわらかなクリーム色と淡いピンク色が白い花びらを彩るロマンティックなバラ。
1997年アメリカ・J&P社作出のスパイス・トワイス(↓)。キース・ザリー氏の作出です。こちらは名前のとおり、強いスパイス香のある芳香種……と思っていたら、農水省の登録ページには微香となっている? では、この名前の意味は?? 謎が多いです。
2008年フランス・メイアン社作出のマイ・ガーデン(↓)。メイアン社よりガーデニング雑誌「マイガーデン」誌に贈られたバラとのことです。芳香種で、「パワフルなバラの香りに爽やかなシトラス」との解説がありました。
2007年フランス・メイアン社作出のアプリコット・キャンディ(↓)。花びらのフリフリが特徴的ですね。芳香種で、「ティーローズの甘さの奥にピーチ」との解説でした。
2020年日本・京成バラ園芸作出の令の風(↓)。ラベンダー色の優しい花の姿です。名前で分かるとおり、令和への改元を記念した一輪。微香種。
2014年オランダ・インタープラント社作出のマヨルカ(↓)。スペインの自治州で、イベリア半島の東に浮かぶマヨルカ島にちなんで付けられた名前です。ヨーロッパのリゾート地として愛されています。
2016年日本・京成バラ園芸作出のシトロナード(↓)。名前はフランス語で、「レモネード」の意味だそうです。咲き始めが淡黄色、白く抜けた後ピンクが淡くのるという、変化が楽しいバラです。
2003年オランダ・インタープラント社作出のホット・ファイヤー(↓)。この独特の花びらの色は、「サーモンピンクにオレンジ色のハンドペイント」と紹介されています。ハンドペイントは、かすれの入った紋様のこと。
1979年ドイツ・コルデス社作出のヘルムット・シュミット(↓)。1974年から82年まで、ドイツ社会民主党(SPD)を率いてドイツの首相を務めたシュミット氏に捧げられたバラです。日本にもファンが多い素敵な政治家でした。青池保子さんの『エロイカより愛をこめて』にもしっかり登場しています。ヘルムートのほうが響きがきれいだと思うけどなあ。
1996年ドイツ・タンタウ社作出のヘルムット・コール・ローズ(↓)。シュミットさんの後にキリスト教民主同盟(CDU)を率いて首相を務めた方です。Kohlはドイツ語でキャベツのことで、人気のあったシュミットさんの後だったので「キャベツ頭(Kohl Kopf)」なんて悪口を言われることもありました。東西ドイツの統一時期を含め、16年間首相の座にいました(ビスマルク以来最長らしい)。2005年日本・京成バラ園芸作出の黒蝶(くろちょう)(↓)。少し小振りな黒バラ系統の花ですが、開きかけも満開も姿がとても美しいです。花もちもいいそうなので、お庭にあると楽しめそうですね。
1999年日本・京成バラ園芸作出の月光(げっこう)(↓)。同社の鈴木省三さんの次の育種家、平林浩さん作出の品種です。三代目が武内俊介さんなんですよね。姿・香り・色のすべてが優れたバラと言われています。
2009年ドイツ・コルデス社作出のプラム・パーフェクト(↓)。美しい紫のバラです。北島マヤちゃんが喜びそう。青バラ系統の中では育てやすいとのこと。香りはあまり強くありません。
2012年ドイツ・コルデス社作出のグレーフィン・ディアナ(↓)。スウェーデン王家の血を引くベルナドッテ伯爵家のディアナ・ベルナドッテ伯爵夫人に捧げられたバラです。ベルナドッテ一族はドイツ・マイナウ島の領主で、雑草が生い茂っていた公園を花と植物の楽園へと変貌させ、島を一般に公開しました。このバラは芳香種で、「洗練された香り、ローズにレモン、ライチー、桃」という解説がありました。
はい! 長々と失礼しました! これでも神代植物公園にある品種はカットしたんですよ~。恐るべし、京成バラ園。