京成バラ園の春バラ(遅刻)レポ2

私が植物園を愛しているのは、名前を知ることができるから。

名前がわかると理解度もぐっと上がりますし、育種家がそこに込めた想いを受け取ることができます。また、こうやってブログに書く際に名前の由来を調べることで、これまで知らなかった知識と出合うことができるのも楽しいです(作出者や作出年は基本的に京成バラ園の名札に従っています。結構ほかのHPとずれていますが💦)。

ということで、本日最初の一輪はこちら。1997年ドイツ・コルデス社作出のセバスティアン・クナイプ(↓)。聞き覚えありませんか? そう、入浴剤で有名なクナイプの創業者の名前です(ドイツ語だからゼバスティアンだと思うけど)。自らの結核を水療法で治し、療養所や児童福祉施設などを設立したクナイプ神父に捧げられました。2004年フランス・メイアン社作出のボレロ(↓)。ラヴェルの楽曲にちなんでいるのかな? 中央に淡いピンク色が見えます。優雅で優美なバラ。1999年ドイツ・コルデス社作出のゴルデルゼ(↓)。ベルリンの戦勝記念塔の上にある黄金の女神像(勝利の女神)の愛称だそうです。Golden Elsieが詰まってGoldelseになったのだとか。映画『ベルリン・天使の詩』では、天使たちがこの像で羽を休めていましたね。2005年イギリス・デビッド・オースティン社作出のレディー・エマ・ハミルトン(↓)。トラファルガー海戦の英雄、ネルソン提督の愛人として有名な女性に捧げられています。Wikiを読むと、その数奇な運命に驚かされます。1998年イギリス・デビッド・オースティン社作出のティージング・ジョージア(↓)。同社の説明によると、ドイツのメディア界で名高いメイヤー夫妻(妻の名はジョージア)に因んでいるそうです。teasingは「からかうような」の意。1999年イギリス・デビッド・オースティン社作出のクラウン・プリンセス・マルガリータ(↓)。同社の説明によると、クィーン・ビクトリアの孫娘で、一流の造園家でもあるスウェーデンのマルガリータ皇太子妃にちなんでいるとのこと。系図がわからない…。1985年イギリス・デビッド・オースティン社作出のマウンテン・スノー(↓)。こういう花びら少なめのバラも美しいですね。神代植物公園のシティー・オブ・ヨークや、ナニワイバラに似ています。後者は一重ですが。しっかり管理された植物園と言えど、名札が付いていない花もあるのです(以下3枚↓)。でも、とても美しかったので撮影してしまいました。来年は名札が付いていますように~!

2009年アメリカ・トム・カルース氏作出のパープル・スプラッシュ(↓)。本当にバラ?と尋ねたくなるような個性的な色と花の形です。甘いリンゴのような香りがします。2010年イギリス・デビッド・オースティン社作出のキュー・ガーデン(↓)。ロンドンにある、キュー王立植物園の250周年記念にこの名前が付けられました。まだ行ったことがないですが、訪ねてみたい場所ですね。1995年イギリス・デビッド・オースティン社作出のノーブル・アントニー(↓)。古代ローマの政治家、マルクス・アントニウスにちなんだバラです。シェイクスピアの戯曲では、『アントニーとクレオパトラ』より『ジュリアス・シーザー』のアントニウスのほうが圧倒的に格好いいです!

1999年イギリス・デビッド・オースティン社作出のメアリー・マグダリン(↓)。キリストの磔と復活を目撃した女性、マグダラのマリアのことです。1991年イギリス・デビッド・オースティン社作出のボウ・ベルズ(↓)。ロンドンにある聖メアリー・ル・ボウ教会の鐘のことで、この鐘の聞こえる範囲内で生まれた者が生粋のロンドン子 (Cockney) とされるそうです。1949年アメリカ・ロングリー氏作出のホワイト・ニュー・ドーン(↓)。1930年アメリカ・サマーセット・ローズ・ナーセリー作出の、薄いピンク色の殿堂入りバラ、ニュー・ドーンの枝変わり品種です。どちらも長い歴史のあるバラですね。2007年イギリス・デビッド・オースティン社作出のプリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント(↓)。 エリザベス2世のいとこで、熱心なガーデナーでありバラ愛好家でもあるアレキサンドラ女王にちなんで名付けられました。2000年イギリス・デビッド・オースティン社作出のルドロウ・キャッスル(↓)。名札はルドロウですが、Ludlowは「ラドロー」という読み方が正しいですね。ラドロー城はイングランドとウェールズの境にあり、エドワード4世が所有した後、息子のエドワード5世、ヘンリー8世の兄で即位前に亡くなったアーサー、ヘンリー8世の娘のメアリーが住んだそうです。あれ、みんな不幸になってる気が…💦1996年イギリス・デビッド・オースティン社作出のセプタード・アイル(↓)。シェークスピアの「リチャード2世」のセリフ:「この歴代の王座、この王権に統治される島……銀色の海に浮かぶ宝石」に由来したバラで、セプタード・アイルとは「王が治める島」という意味合いだそうです。1990年イギリス・デビッド・オースティン社作出のアンブリッジ・ローズ(↓)。アンブリッジはイギリスのラジオの御長寿ソープオペラ、The Archers(なんと1951年から現在まで続いているそうです)の舞台となっている架空の村の名前です。

1992年アメリカ・J・クリステンセン作出のマイダス・タッチ(↓)。ギリシア神話に登場する、触れるものがすべて黄金に変わったというミダス王にちなんだ名前です。確かに、黄金のような輝きのバラですね。ちなみにこのミダス王、「王様の耳はロバの耳」の王様でもあります。結構災難に遭っていてお気の毒。1995年イギリス・デビッド・オースティン社作出のペガサス(↓)。ギリシア神話つながりで言うと、英雄ペルセウスがメドゥーサを退治した際、首の傷口から生まれたのがペガサスであったと言われています。父親はポセイドン。神話だけに自由だな……。2014年ドイツ・タンタウ社作出のアシュリー(↓)。名前の由来はわかりませんでしたが、ゴージャスな大輪で、こぼれるような花びらの渦が花束にしても映えると、人気の品種のようです。1993年フランス・メイアン社作出のポール・リカード(↓)。食前酒としてフランスで愛飲される琥珀色のリキュール「リカール」の創業者に捧げられたバラだそうです。瓶を見るとあれか!とわかるブランドでした。
2006年日本・京成バラ園芸作出の浪漫(ろまん)(↓)。京成バラ園のHPでは「サーモンを帯びたレンガ色」と表現されている花色が特徴的なレトロ風味のバラです。1992年ドイツ・タンタウ社作出のオリンピック・ファイアー(↓)。1992年はフランス・アルベールビルで冬季五輪、スペイン・バルセロナで夏季五輪が行われたので、ヨーロッパがオリンピックの舞台だったんですね。それにちなんだのかな?1989年アメリカ・ウォリナー作出のトーナメント・オブ・ローゼズ(↓)。アメリカのパサデナで毎年1月1日に開催されるフラワー・フェスティバルの名前にちなんで名付けられました。バラの花で飾られたフロート(山車)の「ローズパレード」が見られるそうです。2003年アメリカ・J&P社作出のベラ・ローマ(↓)。花の状態があまり良くなかったのですが、名前が気に入って載せてしまいました。意味は「美しきローマ」(スペル間違っているHPが結構多かった)。次回はぜひベストの状態で会いたいです。2020年フランス・メイアン社作出のクレム・ドゥ・メイアン(↓)。クリームの中でも最高級のものを表す「クレムCrème」の名が付いているとのことです。花の形が美しいですね。1997年ドイツ・タンタウ社作出のブラック・マジック(↓)。黒バラに近い花色から名付けられたのでしょうが、「黒魔術」とは思い切ったネーミングですね。どことなく妖しい雰囲気が漂っています。

1984年フランス・メイアン社作出のイブ・ピアジェ(↓)。スイスの高級時計メーカー、ピアジェ社のバラをモチーフにしたジュエリーシリーズを発表したイブ・ピアジェ氏にちなんだバラです。京成バラ園さん、ちょっと名札のカタカナが苦手みたいでイブ・ピアッチェとなっていました。2011年日本・京成バラ園芸作出の快挙(↓)。10年以上交配を繰り返して生まれたバラとのことで、快挙と名付けたくなるのもわかります。浪漫と同じく、武内俊介さんが生み出したそうです。1990年アメリカ・ラルフ・ムーア氏作出のピンク・パウダーパフ(↓)。お白粉をはたくパフから付いた名前ですね。この花は中大輪ですが、作出者のムーア氏は「近代ミニチュアローズの父」と呼ばれる小型のバラの権威だそうです。1974年ドイツ・タンタウ社作出のローズ・ユミ(↓)。日本のブライダルの草分け的な存在であるデザイナー桂由美さんに捧げられたバラです。ブライダルだから、当然純白。京成バラ園には、このバラに囲まれた桂さんプロデュースのガゼボ(↓)があります。ウェディング写真にうってつけですね。

2015年ドイツ・コルデス社作出のカインダ・ブルー(↓)。青バラですね~。kindaはkind ofの口語体なので、「ちょっとブルーな気分」みたいな意味になります。なかなかおしゃれなネーミング。1926年フランス・ウォルター社作出のマドレーヌ・セルツァー(↓)。これは今回ご紹介した中で一番古い品種かもしれませんね。名前がどこから付けられたのかは、調べられませんでした~💦2022年フランス・メイアン社作出のシュガー・キャンディ・ローズ(↓)。オレンジからキャンディピンクに変化するかわいらしいバラです。今年の5月に福山市で開かれた世界バラ会議(殿堂入りのバラを選ぶ会議ですね)の記念バラに選ばれました。福山のバラ祭りも一度訪れてみたいです!

2019年ドイツ・タンタウ社作出のディジリー(↓)。1本の茎に大輪の花を付けるバラの王道、ハイブリッドティー系統でありながら、病気にも暑さ寒さにも強いのが売りの品種です。最近の品種はこういうものが多いですね。女性の名前が付けられています。2024年日本・京成バラ園芸作出の恋いづな(↓)。古今和歌集の「恋しくは したにを思へ 紫の ねずりの衣 色にいづなゆめ」(恋しい時は密かに思いなさい、決して紫の根で摺った衣のように、決して心を表に出してはいけません)の歌にちなんでいるそうですが、じゃあこれは恋心が表出したバラなんですね。2015年ドイツ・コルデス社作出のジプシー・ソウル(↓)。2015年の時点でこのネーミングがOKだったのにびっくりですが、いわゆるジプシーは今はロマと呼ぶのが一般的です。ドイツ語ではツィゴイナー、イタリア語ではズィンガリと呼んでいたなあ…。2015年フランス・メイアン社作出のレヨン・ドゥ・ソレイユ(↓)。「太陽光線」という意味です。太陽の光を集めたような黄色ですね。黒星病にずば抜けて強いのが、特徴だそうです。2003年フランス・メイアン社作出のレッド・レオナルド・ダ・ヴィンチ(↓)。1993年フランス・メイアン社作出のレオナルド・ダ・ヴィンチはピンク色ですが、こちらはクリムゾンレッド。ただし、枝変わりではないそうです。名付けられた理由は不明。2009年ドイツ・タンタウ社作出のアルテミス(↓)。アルテミスはギリシャ神話の月の女神の名前です。ローマ神話ではダイアナ。月の光のような花の色にちなんでいるのかな。ドリフトローズシリーズは、フランス・メイアン社のアメリカ東海岸支社によって、20年近くもの長い年月をかけて生み出されたグランドカバーローズ。このピンクのバラ(↓)は、2009年作出のスイート・ドリフトです。2007年フランス・メイアン社作出のクリムゾン・スカイ(↓)。朝焼けもしくは夕焼け空のことです。発色の良さがセールスポイントとのことで、うわ~と声が出るほど鮮やかな色合いでした。1958年ドイツ・コルデス社作出の殿堂入り名花、アイスバーグのつる性種で、こちらは1968年イギリス・カンツ・オブ・コルチェスター社作出のつるアイスバーグ(↓)。同社は1765年創業のイギリス最古のバラの育種会社でしたが、2023年に廃業しました。1999年フランス・メイアン社作出のウィンショッテン(↓)。オランダ北東部の街、ウィンスホーテンにちなんだバラです。スペリング(Winschoten)からこの読み方になってしまったのかな。鮮やかな紅バラ。2013年ドイツ・コルデス社作出のマリー・ヘンリエッテ(↓)。オーストリア・ハンガリー帝国(現スロバキア)の女伯爵で、バラの育種家として知られるマリー・ヘンリエッテ・チョテクの生誕150年を記念して名付けられました。2024年日本・京成バラ園芸作出の希成(きなり)(↓)。京成バラ園の新種紹介コーナーにありました! これまた日本人好みのニュアンスカラーですね。ベージュ色が生成色をイメージさせ、そこからの色の変化に希望を託すイメージで名付けられたとのこと。2019年ドイツ・コルデス社作出のクリムゾン・シルエッタ(↓)。ドイツで人気のランブラー・ローズ(しなやかな枝に小さな花を房状に咲かせるつるバラ)を、小さな庭で栽培可能なコンパクトなサイズにしたシルエッタシリーズの1つです。

はい!! 本日のポストは以上です! いつもよりバラの背景を調べるのに時間がかかってしまいました💦

そもそも名前の由来まで書いてあるブランドのHPはデビッド・オースティン社だけで、コルデスもタンタウもメイアンも何も書いていないんです~💦 頼むよ~!!

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