真昼の決闘 ( 1 / 2 )
「将臣くん! お誕生日おめでとう!!」
「お、おう! サンキュー」
望美から満面の笑みとともに渡されたプレゼント。
真昼の有川家のリビングでの出来事だ。
譲はまだ部活の朝練から帰っていない。
渡された箱を眺めながら、将臣は不吉な予感を拭えなかった。
「……望美、これ、な〜んとなく、……買ったものじゃない気がするな」
「当たり〜っ!! 手作りだよ!!」
少々不格好に結ばれたリボンを見ればそんなことは明らかだ。
それより気がかりなのは…
「で、な〜〜んとなく、食い物のような気がするんだが…」
「すご〜〜い、将臣くん!! 大当たり!!」
(譲〜っ!!! 兄ちゃんを助けろっ!!!)
将臣は心の中で大きく叫んだ。
「将臣くん?」
望美が不審そうな顔でじっと見つめる。
「い、いや、おまえまさか、先月のこと、忘れちゃいないよな」
「先月って、譲くんのお誕生日のこと? もちろん! あのときのお礼を兼ねて、将臣くんにも手作りお菓子作ったんだよ」
(いったいどういうシナプスのつなげ方をすれば、おまえの手作り菓子が礼になるんだよっ!!)
望美の脳の神経細胞を呪っても仕方がないとはいえ、突っ込まずにいられない将臣だった。
「あ。じゃあもしかして、今度は譲に作り方を習ったとか?」
一縷の望みを託して尋ねる。
するとバッチ〜ンと背中を叩かれた。
「もう、せっかくケーキをほめてもらったのに、そんなことするわけないじゃない!」
頬まで染めて、照れながら言う望美に将臣の顎が落ちる。
(か、監修なしかよ……)
「でも大丈夫! 今度は将臣くんに習ったとおり、レシピを無視したりしないで作ったから」
「……望美」
うれしそうに微笑む望美を見て、将臣はひとつ溜息をついた。
「…わるい」
くしゃっと望美の髪を撫でる。
「え?」
ダイニングテーブルの椅子を引いて座ると、プレゼントのリボンを解き出した。
「そうだな、リズ先生みたいに自分の教え子を信用しなきゃな」
「将臣くん」
不器用ながらも精一杯ラッピングした箱の中から、お菓子が姿を現す。
「…………」
「…………」
「……望美」
「ん?」
「何、これ?」
「お菓子」
「種類は」
「ん〜〜……焼き菓子、かな?」
ガタンと椅子を鳴らして将臣が立ち上がる。
「品名を言え! 品名をっ!!」
「最初のはシュークリームで、次のがマドレーヌで、最後はクッキー〜!!」
「うまくいかないからってレシピを渡るなっ!! すごいことになってるじゃないか!」
「だって失敗したからって捨てちゃうのもったいないじゃない!」
「だからって俺の胃に捨てるなっ!!」
テーブルの周りを追いかけっこしながら会話が続く。
「ひどいっ! 私のお菓子をまるでゴミみたいに!」
「おまっ、じゃあこれが食い物だって言うのか」
「もちろんだよ!」
「じゃあ食えるのか?」
「そ! そ、そりゃあ、もちろん」
「言ったな……」
将臣が急に足を止めて、望美に箱を差し出す。
「食ってみろ…」
「!!」
にらみ合う元戦神子と元還内府。
「わ、私が食べたら将臣くんも食べるんだよ」
「おお。同じだけ食ってやるぜ」
「先にギブアップしたほうが負けだからね」
「上等だ」
ガリッ
ベチョ
ザクッ
ビシャッ……
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