失敗の教訓
同じ過ちを何度も繰り返すのは愚かなことだと思うのだが……
「カリガネ~!! あの嬢ちゃん、かわいいと思わねえか?!」
「…………」
「あんな子と一緒になれたらたまらねえよな、カーッ! 何言わせんだよ!!」
バンバンと背中を叩かれたが、私は別に何も言わせていない。
そして、きっとおなじみの一連の行動が始まるのだろうと溜息をついた。
「……はあ。花……とか、喜ぶかな」
「喜ぶだろう」
「そ、そうだよな。でも、いきなり持ってくとひかねえか?
オレが惚れてる……みたいに思われちまうのもなあ」
「惚れてるのだろう」
「カリガネ、お、お前、なんって恥ずかしいことを真顔で言ってやがる!
このむっつりスケベが!!」
バンバン!
「…………」
「……はあ。何かこう、心をグッと掴むようなものがねえとなあ~」
「花では駄目だったのか」
「駄目じゃねえけど、花なんてほかのヤローだって贈れるじゃねえか。
何かこう、オレにしか贈れないような特別な物をだな」
「サザキ、一応言っておくが、この間の『宝の地図』は偽物だ」
「わ、わかってる! あんな物信じるほどオレもバカじゃない!」
「…………」
「そりゃあ、前回と前々回と前々々回は信じちまったけど!
オレだって少しは学ぶって!!」
「…………」
そうして、サザキは地図もなしに「大陸」を目指して飛び続け、危うく死にかけたのだった。
あれはもう20年も前のこと。
が、この男は相変わらず……。
「カリガネ~!! あの姫さん、かわいいと思わねえか?!」
「…………」
「あんな子と一緒になれたらたまらねえよな、カーッ! 何言わせんだよ!!」
バンバン!
「……花か」
「ん? ああ、花な!
それもいいが、何かこう、オレにしか贈れないような特別な物をだな!」
「地図……」
「ん?」
「宝の地図でも探したらどうだ」
「おおっ!! そうだな!
やっぱり海賊と来たら宝探しは外せねえからな!
海賊の宝を贈ったら、姫さん、さぞかし喜ぶだろうな~。
やっぱりカリガネはいいこと言うぜ!」
バンバン!
「お~い、地図を探しに行くぞ~!! 船長命令だ~!!」
大きな翼を広げると、サザキはうれしそうに飛び立っていった。
「……また大陸でも目指されたら困る」
空を見上げながら、私は小さくつぶやいた。
教訓:本人が学ばなければ周りが学べ
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