オリヴィエさまのお誕生日 ( 1 / 3 )
第1幕 パーティー前
Scene 1:炎・光
「ジュリアスさま、一大事です」
「何だ、オスカー」
「オリヴィエが誕生パーティを開くそうです」
「ほう、自ら主催するのか。あの者らしいな。
先日の私の誕生パーティへの返礼の意味でも、必ず出席しよう」
「それが…プレゼント持参は厳禁だそうです」
「何?」
「『趣味に合わないものなんてもらうだけ無駄だよ〜ん☆』と」
「オスカー、似ておらぬ」
「失礼しました。
それでその替わりに…その、全員オリヴィエの用意した衣装を着て参加することと…」
「待て」
「は」
「その日は確か重要な出張が入っていた」
「いえ、手回しよく全守護聖のスケジュールを調べ上げていたようで、『みんながフリーなのは調査済みだよ〜ん☆』と」
「似ておらぬと言うのに。それは……一大事だな」
「は」
「考えれば考えるほど目まいがしてきた。その日は急病になるやも知れぬ」
「『首座の守護聖ともあろう人が、自分の誕生日に来てくれた人のパーティをすっぽかすわけないよね〜☆』とも申しておりましたが」
「オスカー」
「似てません」
「…もちろん、そなたも出席だな」
「○*△☆×……ジュリアスさまの行かれるところでしたら、いずこなりと」
Scene 2:炎・水
「オリヴィエが衣装を用意…ですか。それは…」
「まあ、どうせお前のところの闇の守護聖殿はいつもどおり欠席だろうが」
「クラヴィスさまは別にわたくしのところでは……ああ、でも、そうですね。
少し安心いたしました」
「安心してる場合じゃない。お前は絶〜対に遊ばれるぞ。
十中八九、女装だ」
「そんな! オスカー、何を根拠に」
「根拠も何も、自然な流れだろう」
「それはいったいどういう意味で…ああ、でもわたくしは思うのですが」
「ん?」
「わたくしやマルセルに今さら女装をさせたところであまり意外性はないでしょう。
こんな千載一遇のチャンスに、オリヴィエがそんな当たり前のことをするとは思えません。
むしろ女装など考えたこともなかった方に…」
「おい待て! それはいったい誰のことだ!」
「ですから…あなたやジュリアスさまこそ危ないのでは…と」
「く〜〜! きれいな顔して恐ろしいことを言うな。
さすがは闇の守護聖仕込みだ」
「クラヴィスさまは別に…」
「とにかく、そんな考えをオリヴィエに一言でも吹き込んだら、お前の屋敷に火をつけてやるぞ」
「…燃えにくいと思いますが」
「いや、絶対全焼させてやる! わかったな」
Scene 3:地・水
「はあ〜衣装ですか。
そうするとまたビラビラ〜とかスケスケ〜とかになるんでしょうかねえ」
「ル、ルヴァさまはすでにご経験済みなのですか」
「ええ〜、前にお祭りに出かけたとき、ゼフェルやマルセル、ランディたちといっしょにね。
あの時はお化粧までされてしまいましたよ〜」
「そ、それは…ご災難で。そうですか、ゼフェルやランディまで…。
では、防ぐ術はないということでしょうか」
「まあ、みんなでやれば怖くないとも言いますしね〜。
オリヴィエのために一晩くらい我慢するのは仕方ないんじゃないですか」
「ええ、そう…なのでしょうね」
「ところで、クラヴィスはどんな格好をさせられるんでしょう?」
「え? いえ、クラヴィスさまはご参加になられないと思いますが」
「そうですか?
う〜ん、普通に考えればそうですが、あのオリヴィエが黙って欠席させますかねえ」
「は…はあ…」
Scene 4:鋼・風・緑
「じょっ、冗談じゃねーよ!
どうして俺がそんな道楽に付きあわなきゃならねーんだ!
仮装パーティなんて金輪際いかねーからな!」
「でもゼフェルはいつも『バースデープレゼントなんて考えるのかったるい』って言ってるじゃないか。
いっそ用意された衣装を着るだけのほうが楽だろう?」
「ランディ野郎! てめー、この間の祭りでまだ懲りてねーのか!?」
「あ、あれは…」
「2人はまだいいよ〜! 僕なんか絶対スカートはかされるに決まってる〜!
アンジェやロザリアも来るのに、そんなの嫌だよ〜〜」
「マルセル…何の慰めにもならないかもしれないけど、今回は化粧はパスできるぞ」
「すっぴんでスカートなんて余計変だよ〜!」
「まーったく、こんなに恐怖に満ちた誕生パーティを開けるのはあいつくらいなもんだぜ」
Scene 5:夢・水・闇
「はあ〜い☆ クラヴィス、お元気〜?
ああ、リュミちゃんも一緒なんだ」
「オ、オリヴィエ! ああ、失礼いたしました。
お邪魔なようでしたらわたくしは外しますが」
「邪魔なんてとんでもない!
ちょうどいいから2人いっぺんに説明しちゃうよ。
え〜と、クラヴィスは私のバースデイのこと知らないよね?」
「…知らぬな」
「申し訳ありません。わたくしがお伝えしていなくて」
「別にリュミちゃんはこの人の伝言板じゃないんだから。
今月の20日がマイバースデイなんだけど、プレゼントは不要。
ただ、私の用意した衣装を着て参加してくれればいいっていうパーティを開くの☆」
「…お前の用意した?」
「ちょ〜っと、あんたまでそういう顔するのよしてくれない?
何かこのところ『女装させられるらしい』とか『ヒラヒラのスケスケらしい』とか無責任な噂が飛び交っちゃってて困るのよね」
「違うのですか?」
「もう! リュミちゃんも信じてたクチだね☆
ジュリアスやゼフェルも逃げ出しかねないって言うし、本当は当日のお楽しみにするつもりだったけど、仕方ないからこうやって衣装を配って回ってるんだよ。
まったく、主役にここまでさせるかって」
「はあ…申し訳ありません。よろしければ残りはわたくしが…」
「ああ、だめだめ。わからずやが多いから私が直接説得しなきゃ。
で、衣装を確認したら、当日私の屋敷にそのまま持ってくること。
着替えは家でやってもらうから」
「聖殿の集いの間ではなく、私邸でおやりになるのですか?」
「私は公私の区別はしっかりつけたいの! いい? わかった?
クラヴィスもねえ、欠席なんかしたらあんたの執務室のカーテン、全部ピンクにしちゃうからね」
「…………………………」
「じゃ、リュミちゃん、あとはよろしく☆」
「は、はい。お気をつけて」
「………本当にやりかねぬところが、あの者の怖さだな」
「そう…ですね。ええ?!」
「どうした、リュミエール」
「ク、クラヴィスさま、この衣装は……!?」
「これは……」
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