2009/06/27
舞台 『MOZU啼く城』4日目夜の部

懐かしの六本木、俳優座劇場
前に来たのは『寺院の殺人』(イギリス国王リチャード2世カンタベリー大司教聖トマス・ベケットを暗殺させちゃうお話)のときだったような……。とにかく好きな劇場です。

『MOZU啼く城』はお話的には、戦国時代を舞台に現代風なギャグが混じり合う内容でしたが、殺陣の迫力が素晴らしかったです。
間に挿入されるダンスもレベルが高くて美しかった。

容赦のない圧政で領民から恐れられている虎尾長則
その城内で跡目争いが起きているまさにその時、領地に神の子を名乗る人物が現れ……。

城内の長則の周辺の描写はひたすらシリアスで張りつめているのですが、領地のほうはかなりコミカルに描かれます。
その中心となるのが、今回客演している根本くんアイルくん
全然似ていないんですが(笑)兄弟という設定で(根本くんが兄さん)、二人はセコい詐欺をしながら旅をしています。

神の子
も、外人っぽい顔(笑)のアイルくんが、金髪のカツラをかぶって聞きかじりのキリスト教の教義を説くという、タダ飯にありつくためのペテンだったのですが、予想外に領民の支持を集めてしまい、二人はこの地に定住できないかと考えるようになります。

兄弟コンビネーションはとてもよかったです!
アイルくんは大阪人の本性発揮、ギャグ炸裂で、「お、お館さま~?」と突っ込みつつも楽しめました。
根本くんも相変わらず笑わせるタイミングの取り方がうまい!

その上、なんか根本くんビューティーアップ してませんか?
舞台に出てくると目が釘付けになって、話の筋を追いづらいんですけど~(笑)。


後半、領主に捕えられたアイルくんが鋸引きの残虐な刑を科されながら、息絶える瞬間までキリストの教えを説き続ける……というシリアスな展開になり、その姿に感動した領民たちがついに領主を倒すために立ち上がります(もちろん根本くんも弟の弔い合戦に加わる)。

その際、舞台には大きい十字架が。
ヨーロッパ史を勉強していると、キリスト教ってそんなに平和な宗教じゃないよ~(なんせ『寺院の殺人』があるんだから)と思っちゃいますが、この劇では素晴らしい宗教として描かれていました。
隣の芝生は青いのか?

領主が倒され、領地が平和を取り戻したところで幕となります。

演技的にも、技術的にもとても充実した、レベルの高い内容でした。


ただ、このところいくつかの舞台を見ていてちょっと気になるのは、人物の記号化の激しさ。
悪い人は悪くて、いい人はいいというキャラ付けが強すぎて、立体的な人物像が立ち上がってきにくいというか。

人間は複雑で、悪い奴が全方向悪いわけじゃないのが面白さであり、難しさでもあります。

時間的、空間的制限の中で、演劇だからこそ掘り下げられる部分を大切にしてほしいなあと思いました。