部屋割り大作戦 ( 2 / 2 )
「あ~……四神同士のほうがよかったのかなあ~~。
でも、それもなあ~~」
すっかり落ち込んだ景時の肩を叩いて、譲が囁いた。
「景時さん、俺たちの部屋、大人数組とほとんど同じ大きさですから、来てもらって構いませんよ」
「おお、この部屋で酒が飲めるのは幸鷹だけだからな、景時が来るのは大歓迎だぜ」
将臣も明るく言った。
「ありがとう~~!! 後で酒持って遊びにいくね~!!」
「翡翠殿は、『宮仕え』の部屋で一献、いかがかな」
友雅が声をかけた。
「それはありがたいお申し出だ。雅を介す方ばかりのようだからね」
「それは明らかに俺への嫌みだよな、翡翠」
勝真が険のある声で言い返す。
「とんでもない」
「安心しろ、俺は早々に『武士』の部屋に邪魔させてもらう」
そう言いながら立ち上がると、たまたま耳に挟んだ九郎が
「ああ、さすがに寝る場所まではないが、いつでも来てくれ」
と応えた。
「では、部屋割りはこちらに張り出しますので、各自もう一度ご確認ください。
就寝前はどの部屋にいらしても結構ですが、緊急の連絡等が発生する場合もありますので、必ずお休みになるときは部屋に戻っていただけるようお願いいたします」
「……さすが『宮仕え』組だな、鷹通」
天真が感心したように言うと、
「ありがとうございます」
と、鷹通が微笑んだ。
「詩紋! こっちにも遊びに来いよ」
「うん。未成年組っていうのもアリだよね」
「未成年って何だ?」
天の朱雀二人と詩紋が楽しそうに部屋に向かう。
「未成年だと結構な集団になるんじゃねえか?」
後を追いながら天真が言うと、
「鷹通さんも20歳前だろう?
とすると、天真たちの八葉は未成年が五人か」
と、譲が指を折りながら答える。
「へえ~、そっちは結構若いんだな」
これは勝真。
「僕らの中では、十代の八葉は三人……ですか」
彰紋が言うと、
「オレたちも同じだ。
もっとも年齢と人間の成熟度は必ずも比例してないけどね」
と、ヒノエがウインクした。
「まったく、彰紋くんや譲くんが君より下とは思えませんからね」
「おい、そこのおっさん!」
「何ですか? 坊や」
「…っ!!」
火花を散らす叔父と甥の間に、
「ぼ、僕はまだまだ至らないことが多くて、とても成熟などしていませんから」
と、彰紋が入って懸命になだめた。
譲と天真がそれを呆れたように眺める。
「あ、部屋割り決まったんだ。なんか面白いね。
どのお部屋に遊びにいこうかな~」
突然、涼やかな声が響いた。
八葉たちがいっせいに振り向く。
鷹通が貼り出した部屋割りを、あかねが興味深げに見ていた。
「神子殿、よろしければ私たちの部屋にお越しください」
「ああ、何せ最も雅な部屋だからね」
「神子がお越しくだされば、とてもうれしいです」
早速ソフトな勧誘を開始するのは白虎の二人と永泉。
「何言ってんだよ。現代組の部屋が一番気楽だよなあ、あかね」
「譲さんと一緒にお菓子作ったんだよ」
一番有利な立場にいるように見える天真と詩紋。
「神子は我らが結界を張って守る」
断言する泰明。
「あかね、ほかの部屋だと絶対肩凝るぜ!」
これまた断言するイノリ。
「……武士の部屋は……さすがに神子殿にはむさくるしいかと……」
頼久が頭を垂れて苦悶するのを見ながら、あかねは焦りまくった。
「じゃ、じゃあ順番にお邪魔することにします!
え~と、各部屋30分ずつ!!」
安堵とも感嘆とも取れるどよめきが室内に響く。
あかねが自分の軽率な発言を、心の中で悔やんだことは言うまでもない。
その夜神子様は、少しでも長く自分たちの部屋に引き止めようとする八葉たちを振り切るのにひどく苦労したのだった。
ということで、今年もよろしく、八葉の皆さん!
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