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天地白虎トーク ( 2 / 2 )

 



「ええっ? 友雅さんは武官なんですか」

「ええ。弓馬に優れ、剣の腕も確かでいらっしゃいます」

驚く譲に、鷹通が穏やかに説明する。

「へえ~。やっぱり京の貴族っていうのは、武官まで優雅なもんだねえ」

景時が感心して言った。

「見かけ倒しなのだよ。きみたちのように大掛かりな戦場に出たことはないからね」

「武芸に関しては、武士たちが一手に担っているのが京の現実です」

友雅の言葉を、幸鷹が補う。




南斗宮の一角、譲や景時が武具の手入れをしている広間には、いつの間にか白虎たちが全員集まっていた。

譲の弓は、百年、二百年前の八葉にとってはそれなりに珍しいらしく、かわるがわる手に取り、弓弦の具合や造形を吟味している。

「とはいえ、幸鷹殿も武芸はたしなまれるのだろう?」

友雅が、傍らの幸鷹に尋ねると

「この男は真面目だからね。貴族たちの中では一番腕がたつのだよ。迷惑なことに」

と、翡翠が横から口を出した。

「あなたこそ、首領の割に前線に出過ぎではないですか」

「お偉い貴族様と違って、後ろでふんぞりかえっているわけにもいかないからね」

「ま、ま~まあ、みんな、八葉として怨霊とも戦わなきゃならないわけだし、武芸を磨くのはいいことだよね~、譲くん」

険悪な雰囲気を察して、景時が割って入る。

「そうですね。神子を守るための力は、あるに越したことはない」

譲がうなずいた。




「譲殿は、京にいらしてから弓を学ばれたのですか」

鷹通が興味深げに尋ねる。

「いえ、向こうでも部活……学問の傍ら、弓を学んでいました。ただ、動かない的が相手でしたから、実戦にはなかなか生かせなくて」

「いや、譲くんはすごく筋がいいよ~。俺なんか、何年やっててもうまく当たらないもん」

景時が明るく言い添えた。

「何言ってるんですか。景時さんには銃があるでしょう?」

「ああ、そう、種子島以前に銃があるというのに、私も驚きました」

幸鷹が身を乗り出す。




「日本で銃の類いが初めて使われたのって、元寇のあたりですか?」

譲が尋ねると、

「そうですね。そもそも火薬は中国の発明品。ヨーロッパよりも先に武器として使われていたはずです」

と、幸鷹が答える。




「おや。また二人で楽しげに…」

「ずるいねえ、別当殿。その話題では私たちは蚊帳の外だ」

二人の地の白虎に非難され、幸鷹と譲は微かに頬を上気させた。

「そのようなつもりでは」

「すみません。俺が話をふったから」

「友雅殿も翡翠殿も、本気ではありません。気にすることはありませんよ、譲殿」

鷹通がそっと助け舟を出した。




「ほんと、なんか仲のいい兄弟みたいだよねえ。天の白虎は」

景時が少しうらやましそうに言う。

「それに比べて地の白虎は、俺と先代さんたちの間にすごい溝を感じるなあ」

「おや、そのようなことはないよ、景時」

「そう。私たちの間にも、大きな溝はあるからね」

ふたりの白虎ににっこりと微笑まれて、景時は背中に冷たいものを感じた。

「あっ……そ、そう~~なのかな。ははっ」

(って、笑うとこじゃないよな~)




「ときに、景時には美しい妹御がいるそうだね」

ずいっと友雅が迫る。

「ああ、私も聞いたよ。妙齢の美女とか」

今度は翡翠。

唐突な話題の転換に、景時は本気で焦る。

「い、いや、朔はあの、そんな」

「大切にしているのだろう? ぜひ会ってみたいね」

「千歳殿も美しいが、時代が異なれば花の香も異なるだろうしね」

景時の顔色が変わった。




「む、無理ですよ~! 朔は天界に来てないんですから!」

「ここならば、夢は叶うのではないかな、翡翠殿」

「そう、われわれ二人が同時に願えば、不可能ではあるまいね」

二人はめくばせを交わすと、またにっこりと微笑む。

「ちょ~っと、勘弁してくださいって~! たとえ朔が来ても、あなたたち二人は絶対に絶対に、接近禁止です~!」




「景時さん、気の毒……」

「相手が悪すぎます」

「まさしく」

譲、鷹通、幸鷹は、先代二人に遊ばれる景時を見て、それぞれにそっとため息をつくのだった。


〜つづく?〜


 

 
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